失敗談 / otto
人生、生きてりゃそれなりに良い事も悲しい事も起こるわけでして、「凹凸のない人生なんて噛み終わった後のスルメみたいなものさ」て言う名言通り、あ、これは今僕が考えた名言なんですけども、つまりはそんな人生に何の魅力もないと。そうなりますと人というのは自分の人生を彩るために、この凹凸を人工的に作り出そうとする時期があります。これを俗に『思春期』と呼ぶのだと思います。

あ、申し遅れました、僕はyujiro君に「頼む!書いてくれ!首を縦に振らないと君の大事にしている熱帯魚を1匹残らず煮て食うぞ!」と脅されて、こうして醜態をさらすことになったottoと申します。どうぞよろしくお願いいたします。今回は『失敗談』の話を書いてほしいといわれたのですが、折角ですので、この思春期が起こした失敗談の話を思い出してみることにしました。


自意識が服を着て街を練り歩いているような思春期時代。こと、統計学的に見ますと『失敗しやすい思春期はいつごろ?』という問いに対して、13~14歳という年齢が多くあげられています。すなわち世間一般では中学校2年時という明快な回答があるわけです。「そういえば俺も中2の頃は…」なんて方も多いんじゃないでしょうか。それくらい中2という1年間は、人生の中で最も「大人になってから振り返りたくない時期」、つまりは人生の鬼門だったりする気がします。翻って我が身のことを思い返してみますと、中2時代の思考回路を120%以上の割合で支配していたのは『モ、モテたいんや…』ということでした。

これはもちろん三十路を手前に控えた今となっても褪せる事のない、男子永遠のモチベーションですが、今や僕の思考回路には『お金がほしい』だの『休みがほしい』だの『この領収書の金額の欄を今すぐ白紙に戻す魔法が知りたい』だの様々な煩悩が滑り込む位の余裕はあります。モテたい純度は減退傾向にあるといっても過言ではありません。それ位、中2の頃はモテたかったわけです。

しかしモテるためならどんなことでもするぜ!という強い気持ちに反比例するかのような現実。足の速いヤツが体育祭で受ける黄色い声援も、文化祭でアグレッシブに演奏される尾崎豊のコピーバンドに向けられた潤んだ視線も、自分に向けられていないと判った瞬間からすべてが憎しみの対象でしかなかったあの頃。とりわけ運動能力が長けているわけでもない。尾崎どころか自宅のラジカセから流れてくるのはお袋の愛聴盤だった南こうせつ。勉強でも、一芸でも秀でたものを持たなかった自分が最後にたどり着いたのはオシャレになることしかありませんでした。しかしながらこのオシャレというヤツがとても難儀です。

男性の方はココから自分のオシャレ遍歴を紐解いてみてください。その、最初の第一歩は何であったか。

「お袋が買って来る洋服からの卒業」なのか。
「とりあえず的に靴下の色から変える」なのか。
「昨日ビール飲んじゃって…的な嘘に見られる意識レベルの変化」なのか。

そのどれもが正解です。しかし僕は違った。
僕にとってのオシャレ必須条件とは、『良い匂いがするヤツはみんなオシャレ』という偏見のみで塗り固められたものだったのです。
俺がモテないのは良い匂いがしないからだ。この多汗な時期(多感とかけました!うまい!)がすべての原因なのだ! NO MORE 汗!(この時点でだいぶ汗をかいています)

そこで僕はこの意見に賛同してくれた友人たちを一堂に集め、「どうすれば良い匂いをかもし出せるのか?」という本当に無駄な会議を週2ペースで繰り広げました。一人1000円の出資金を集めて香水の購入、あるいは脇の下に常時ガーゼハンカチを挟みこんで吸収力アップなど、様々な作戦が実行されましたが、残念ながら結果は伴いませんでした。しかし、中2な僕らの結束力は思いのほか強く、こうなったら良い匂いがするまで一生独身な!独身貴族な!え!?貴族はいやだ!みたいな誓いを勝手に立てたものでした。間違いなく当時流行った横山三輝「三国志」の影響だったように思います。

2週間後。造反者が生まれました。

「すまん、告白された…」虫のような声で友人は呟きました。しかしここでも中2気質は暖かく、いや君、それは裏切りではなく卒業だよ。これからも仲睦まじくやってくれたまえ。君に幸アレ!と一同拍手。よく見ますと全員が歯を食いしばっています。そんな第1期卒業生が衝撃のコメントを我々在校生に投げかけてくれました。

「どうやら香水はただふりかけりゃ良いってもんじゃないみたいだぜ」

ん?それどういうこと?香水って臭いの気になるところ、すなわち
脇の下や髪の毛などに付ける物じゃなかったってこと?おいおい、じゃあお前はその法則を知ったがゆえに即モテだったと言いたい訳?てめえ!隠すな!教えろ!何?香水のこと、もうちょっと勉強すりゃ判るって?勉強が嫌いだからこうやって簡単にモテるための方法考えてたんじゃねえか!おい!頼む…ッ!!

我々残されたものにとって、彼の残したこの言葉は謎かけ問答のようなものでした。良い匂いがするからモテる、というのではなく、「ココ」から良い匂いがしたからモテた、という意味なのでしょうか。そして「ココ」とは一体どこなのか。当時インターネットのようにすぐさま様々なものを(清濁合わせて)調べられる便利なものはありませんでしたから、こういう時は3軒隣に住んでいる、自称「頭にタオルを巻くスタイルの発祥は大分県というレベルまで網羅している雑学王」こと田沼くん(仮名)に聞いてみることにしました。

僕「田沼君!聞きたいことがあるんだ!」
田「何でも聞けばいいよ!」
僕「友達に香水の勉強をしろって言われたんだけどさ」
田「香水ってあれだぜ、フランス生まれなのね」
僕「うん」
田「フランスって昔トイレがなかったんだよ」
僕「うん」
田「それでね、用を足すときは大も小も街の中で垂れ流しだったんだって」
僕「!!」
田「それで香水つけて臭い消しにしたそうだよ」
僕「(じゃあ脇の下とかってそんなに悪い線じゃねえじゃねえか)!!」
田「これが香水の起源らしい」
僕「ありがとう田沼君!これお礼ね!」

僕はチロルチョコ3つ分と引き換えに得た情報をいち早く多汗連合に報告。あのオシャレの都と信じて疑わなかった華の都パリスが、かつてそんな糞尿まみれの街だったという話に、一同驚きを隠せない状況。そんな中、静寂を引き裂くかのような発言が飛び出しました。
「ようは僕ら汗の臭いを隠しても、○ンコ臭をごまかしきれなかったってこと…?」
もちろん社会的常識、社交性を身につけた今の僕であれば答えは自ずとNOなのですが、中2な僕らはそうはいきません。「そうだ!間違いねえ!」「○ンコ臭のことは頭になかった!」「つうかアイツはそれに気が付くなんて、ちょっと見直した!」もはや会場の熱気はフジロック。硬く握り締めたこぶしを振り上げ、情報提供者であった僕はまるで神のような扱いを受けました。しかしカラクリさえ判ればもうこっちのもの。明日からはモテ道という名の輝ける栄光が僕らの目の前にひろ‥

「よし!じゃあ早速俺たちも試してみよう!でも、ここは情報もって来てくれた事に敬意を表して、ottoからやってもらおうぜ!」



…え?

会場(当時空き部屋だった囲碁部室)から鳴り響く「ottoコール」。いや、いいよ、俺はあとでさ…。え?だめ?あ、そう…。もはや暴徒化したオーディエンスを沈めることは不可能に近い状態。仕方なく僕は共同出資して購入した香水(さわやかマリンをイメージした柑橘系の香りだったように思います)を手に持ちトイレへ。一呼吸おいて気持ちをリラックス。男としての意地、なにより来るべき栄光の未来へ向かって、僕は震える手を押さえ、狙い定めて肛門へ噴射!
あれ、なにこの感じ!柑橘系?今、おれ柑橘系?すきっとした爽や…
痛い!しみる!「おかああさあああああああん!!!」

トイレの中で苦悶するこの中2の咆哮はその後の結末を書くまでもなく、やがて多汗連合はこのあとわずか5日後に解散となりました。失敗は成功の母です。今回、このように長いだけでまったく実のない話を読んでいただいた方だけに、そっと成功のヒントを書き残させていただきまして、僕の話を終えたいと思います。

『肛門に柑橘系の香水を付けても沁みるだけでモテない』



ご清聴ありがとうございました。
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by text_project | 2006-03-22 22:31 | ゲスト
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